農山村地域経済研究所 新庄支所から

豊かな自然と宝物がいっぱいの農山漁村が、全国各地にあります。この村々を将来の世代に残そうと、一年の半分以上を農村行脚しながら、村づくりをサポートする楠本雅弘という先生がいます。これは先生の応援ブログです。

「俺は、木を殺している」<山が哭いている>

 先日(10月20日)、北桜林業の「芋煮会」がありました。私たち新入りの3人と、これまで林業に従事されてきた先輩方との顔合わせをして、懇親を深めてきました。社長を含め、先輩方からのアドバイスは、異口同音「命にかかわる危険な仕事だから、伐採のルールを守り、安全に仕事を進めてほしい」というものでした。そして「俺は、これを守っていないときは、厳しく𠮟る!」という先輩がいました。
 私は、退職をして<アルバイト>的な気持ちがあったと思います。本業であろうが、アルバイトであろうが、仕事は命と隣り合わせ。甘い気持ちを打ちのめされた気分でした。
 そして、話が進む中で、先輩が伐採している時の自分の気持を「俺は、木を殺している」と表現されました。「何十年、何百年かかって育った木を、俺は5分もかからずに切り倒している」とも。ここに、山や木への感謝と謙虚な心とがにじみ出ています。
山が豊かだからこそ、豊かな農業が成り立っているし、魚付き林の話をするまでもなく豊かな漁業を可能にしている。もう一度、先人たちの教えを学びなおす必要があるのではないか。

一方で、10月6日に、赤倉の山奥に仕事に行った帰りに「白川ダム」の工事現場を見てきた。ただただ唖然として、呆然として立ち尽くすばかりだった。ほんの少し上流の砂防ダムと見比べ、心に浮かんだのは「山が哭いている」だった。ダムの建設の是非を言っているのではない。ダムの必要性を否定するものではないが、ダムがつくられるときには、どこの山もここと同じなのだと確信した。無告の山や木の慟哭が聞えた。

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